高校でデータ活用特別授業を実施ー97.9%が学校でも使えそうと回答ー
本プロジェクトは、三重県の私立高校において、高校1年生を対象に「データを使って次の行動を決める力」をテーマとした特別授業を、サンエルが実施したものである。
題材は、学校の食堂の混雑。
原因を予想し、集めるデータを決め、アンケートや観察で確かめながら、対策まで考える流れで進めた。
授業後アンケートでは、「学校生活でも使えそう」97.9%、「行動を変えたい」95.7%、「正解探しより決め方が大事」85.9%と、学びが次の行動につながる結果が見られた。
| 業種 | 私立高等学校 |
| 提供サービス領域 | 探究学習支援 |
| 実施概要 | 三重県内の私立高校にて、高校1年生を対象に、データを材料に意思決定のプロセスを学ぶ「データ活用」特別授業を実施。真偽が分からない情報や“なんとなく”の印象に向き合い、根拠をもとに判断する「決め方」を体験する内容とした。 |
今回の特別授業の背景
実施校は文部科学省の「DXハイスクール」指定校で、段階的にデータ活用やAIに触れる学びを進めている。
一方で、近年は若者を中心にSNSやニュースなどから日々大量の情報に接する機会が増え、真偽を十分に確かめないまま話を信じたり、印象だけで結論を急いだりしやすい状況が見られる。
さらに、数字やグラフに触れる機会が増える今、数字を「正解そのもの」のように受け取り、前提や条件を確かめないまま判断してしまうリスクが広がっている。
そこでサンエルは、情報や数字に流されず、根拠をそろえて判断する“決め方”を体験できる授業として、「データを使って、次の行動を決める力」をテーマに企画した。
実施内容
高校1年生向けに特別授業(50分×2回の合計100分)を実施した。
講師は、三重県内の企業や自治体の現場でDX支援を担うサンエル社員が担当。
題材には学校の食堂の混雑を取り上げ、まず「混雑の原因は何か」を考えて仮説を立てた。
次に、その仮説を確かめるために「どんなデータを集めるか」を決め、生徒はQRコードからアンケートに回答し、結果をその場で可視化した。
アンケートだけでなく観察や記録のデータも集め、集計結果を見ながら「本当にそう言えるのか?」を問い直したうえで、回答者の偏りや比較条件をそろえるための「測り方」も整理。
最後に、集めた数字をもとに対策案まで検討し、「自分はなぜそう判断したのか」を言葉にしてまとめた。
授業設計のポイント
| ポイント(何に効くか) | SunLがしたこと(設計) | 生徒の変化 (できるようになったこと) |
|---|---|---|
| 1. 正解探し→決め方(手順) | 判断の手順を授業の中心にした | 次の行動まで考えられた |
| 2. なんとなく→仮説(問い) | 問いを立てる練習を組み込んだ | 印象を「確かめる対象」にできた |
| 3. 偏りを前提に確認(比べ方) | 比べる条件・数え方をそろえた | 根拠をそろえて書けた |
| 4. 立場で答えが変わる(多視点) | 複数の見方で整理する場を作った | ちがいを整理してまとめられた |
| 5. 同じ立場でも重要とする目標は人によって違う(価値基準) | 目標・評価軸を言語化し、優先順位やトレードオフを扱う設計にした | 自分の基準を示しつつ、他者の基準も踏まえて意思決定できた |
| 6. データ活用は自分に使うとやりやすい(自己適用) | 他教科や日常でも同じ手順を応用し、継続して使えた | データは自分の行動にも使えると気づけた |
| 7. 今後も長く使える(再現性) | 授業外でも使える手順の「型」を整え、振り返りまでセットにした | 他教科や日常でも同じ手順を応用し、継続して使えることを理解する |
この授業のねらいは、知識を増やすことではなく、「どう考えて決めるか」のやり方を身につけることだった。
まず、答えを当てるのではなく、決めるまでの順番を大事にした。
次に、「なんとなくそう思う」をそのままにせず、「本当かな?」という問いに変えて、たしかめるための予想(仮説)を立てる練習を入れた。
また、集めた数字にはかたよりが出ることもあるため、同じ条件でくらべられるように、数え方や見方をそろえて確認した。
さらに、人によって立場や目的がちがうと答えが変わることもあるので、いろいろな見方を整理して考える時間をつくった。
これにより、生徒は気分だけで決めず、集めた数字や事実をもとに理由をそろえ、自分の考えを言葉にしてレポートにまとめられるようになった。
こうした変化は、特定のテーマに限らない。学習や探究、学校生活の話し合いなど、判断が必要な場面で何度でも使える力として生きる。
授業実施後の変化
授業後アンケートから、大きく3つの変化が見えた。
- 今日どれだけ取り組んだか
- 前日、前週と比べてどう変化しているか
- 目標に対して現在どの位置にいるか
理解で終わらず、「やってみる」という意欲につながっている点が今回の成果である。
主要な変化
アンケート結果ハイライト
| 何が変わったか | 設問 | 結果(要点) | アンケート結果から 言えること |
|---|---|---|---|
| 見方が変わった | ①「『正解を当てる』より『どう決めるかを考える』ことが大事だと感じたか」(1〜5) | 85.9%が肯定 | 「決め方」を学んだ実感が強い |
| 日常に持ち帰れそう | ②「勉強・探究活動・学校生活でも使えそうか」 | 97.9%が「使えそう」 | 授業で終わらず応用できる |
| 行動を変える気持ち | ③「行動や考え方を少し変えてみようと思ったか」 | 95.7%が「変えたい」 | 次の行動につながっている |
| 印象に残った要素 | ④「一番印象に残ったもの」 | 参加型33.8%/意見が分かれた21.8%/食堂の例22.6% など | 体験と具体例が効果的だっ |
| 次に学びたいこと | 探究で今後受けたい内容(複数回答) | AI活用44.9%/プログラミング36.8%/収集・処理31.2%など | 学びへの関心が高まっている |
数字が示すこと
設問①では、85.9%が「決め方を考えることが大事だ」と回答した。
多くの生徒が、「正解を探す授業」ではなく「考え方を学ぶ授業」だったと受け止めていることがうかがえる。
設問②では、97.9%が「ほかの場面でも使えそう」と答えた。
学びがテスト対策にとどまらず、探究活動や日常生活にも応用できる――そうした手応えが広がっている。
設問③では、95.7%が「少し変えてみたい」と回答した。
さらに、そのうち23.1%は「具体的に試したいことがある」と答えており、理解に留まらず次の一歩を意識する生徒も一定数いる。
変化を生んだ要因
設問④の結果からは、成果につながった要因が浮かび上がる。
授業は、次の流れで進めた。
【授業の進め方】
- まず、全員が答える
- 次に、結果をその場で可視化する
- そのうえで、「なぜこうなったのか」を考える
こうした段取りを踏むことで、思考は一段深まった。
また、扱ったテーマが「食堂の混雑」という身近な題材だった点も大きい。
自分の生活と直結しているため、状況を具体的にイメージしながら考えられた。
| 授業の要素 | 反応(④) | どう役立ったか |
|---|---|---|
| みんなで答えて結果を見た | 33.8% | 自分の意見が材料になり、考えやすくなった |
| 結果が分かれた | 21.8% | 「なぜ違うのか」と理由を探るきっかけになった |
| 食堂の例 | 22.6% | 身近なテーマで、自分ごととして考えられた |
| 数字や計算 | 15.0% | 感覚ではなく根拠で考える体験ができた |
さらに、体験 → 気づき → 理由を考えるという流れが生まれ、理解が納得へとつながった。
その結果、「次はこうしてみよう」という行動意欲を引き出した。
参加者の声
アンケートでは、次の問いを設けた。
「今日の授業で『なるほど』と思ったことや、あとで思い出しそうなことがあれば教えてください。」
回答の多くは、短い言葉で端的に書かれていた。
その分、授業の中で何が印象に残ったのかが、ストレートに表れている。
なかでも目立ったのは、「仮説」に関する記述である。
- 「仮説の立て方」
- 「仮説を立てること」
- 「立場が違えば仮説が変わることに驚いた」
“答え”そのものではなく、“考え始め方”が記憶に残っていることがうかがえる。
さらに、具体的な手法や題材に触れた声も見られた。
- 「混雑指数の求め方」
- 「食堂の例」
- 「AIの使い方」
抽象的な説明よりも、実際に扱った例や計算方法のほうが印象に残りやすかったといえる。
一方で、「ない」「特になし」といった簡潔な回答も一定数あり、受け止め方には個人差があった。
それでも、具体的な記述が複数見られたことから、印象に残ったポイントは回答から把握できる。
まとめ
今後受けてみたい内容として最も多かったのは、「AIの正しい活用方法」である(44.9%)。
続いて「プログラミング」が36.8%、「データの集め方や処理の手順」も31.2%と高い関心を集めた。
さらに、「地域の課題をデータで分析したい」という声も19.7%あり、身近なテーマをデータで考えたいという意欲がうかがえる。
今回の授業を通して、生徒は「どうやって決めるか」という基本の流れを身につけ、感覚に頼るのではなく、理由に基づいて判断する方法を体験として理解したといえる。
感覚に頼るのではなく、理由に基づいて判断する方法を体験として理解したといえる。
この経験により、次の段階としてAIの活用やデータを使った学びへ進みやすい土台が整った。
いきなり高度な分析に飛ぶのではなく、「データをどう見るか」「どう比べるか」といった基礎から取り組める状態になっている。
土台ができたことで、今後は実践の幅を少しずつ広げていけるだろう。
また、本授業の進め方はテーマを変えても応用できる。
特別な設備を必要としないため、他校でも実施しやすい構成である。






