介護福祉サービス現場の記録負担を軽減—事故報告業務のデジタル改善—
本プロジェクトは、介護福祉サービス事業者における事故・ヒヤリハット(事故未遂)報告業務を、現場で無理なく運用できる形へ再設計した取り組みである。
対象は特別養護老人ホームとデイサービスの2種別。
両サービスに対応した計4種類の報告書テンプレートを整備し、手書き中心の運用をExcel入力へ移行した。
入力内容は自動で集計され、承認状況も一覧で確認できるようにすることで、報告から確認・集計・振り返りまでを一連の流れとして運用できる状態を整えた。
| 業種 | 介護福祉サービス |
| 提供サービス領域 | ツール活用サポート |
| 実施概要 | 地方の介護福祉サービス事業者において、事故やヒヤリハット(事故未遂)事例の報告業務を紙からデジタル化。Excelとマクロで集計・管理機能を整備し、報告負担の軽減と業務効率化、現場改善の推進を支援した。 |
クライアントの課題
職員は手書きで内容を記入し、書類を所定の場所に保管し、必要に応じて他の職員と共有していた。ただ、記入、保管、確認といった一連の作業に時間がかかり、本来注力すべき利用者対応の時間を圧迫していた。
また、外国籍スタッフも多く、日本語を手書きで記入することに苦労する職員も少なくなかった。
さらに、手書き文字の癖や表現方法が職員ごとに異なることで、後から記録を読み返した際に内容を正確に把握できない場面もあった。
必要な情報を探すだけでも手間がかかり、現場でのスムーズな情報共有を妨げていた。
記録は紙で保管されていたため、過去の対応内容をまとめて確認することも容易ではなかった。傾向や課題を振り返ることができず、現場改善に活かしにくい状況が続いていた。
主な課題
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 記録業務の負担が大きい | 業務記録を紙で管理しており、手書き・保管・共有までに多くの時間がかかっていた |
| 記録内容にばらつきが出やすい | 外国籍スタッフも多く、日本語は習得しているものの、手書きでの記入に負担を感じる職員もいた。 文字の書き癖や大きさによって視認性にばらつきが生じ、読み返した際に内容を正確に把握しづらいケースが発生していた。 |
| 情報が活用されず改善につながらない | 記録は紙でファイリングされて管理されていたが、必要な事例を探し出すには手間がかかっていた。対応の傾向や課題を振り返れず、現場改善や業務の見直しに活かしにくい状態が続いていた |
実施内容
本取り組みでは、介護福祉サービス事業者における事故およびヒヤリハット(事故未遂)の報告業務を、現場で無理なく使える形に見直した。
対象としたのは、特別養護老人ホームとデイサービスの二つのサービス種別である。それぞれに「事故」「ヒヤリハット(事故未遂)」を組み合わせた計4種類の報告書テンプレートを設計した。
報告書の項目は、現場職員が迷わず入力できるよう、実際の記入シーンを想定しながら必要最小限に整理している。
あわせて、これらのテンプレートを活用し、ボタン一つで新規の報告書ファイルを作成できる仕組みを整備した。
入力された内容は事故区分ごとに自動集計され、管理者は個別の報告書を一件ずつ確認しなくても、全体の事故発生状況を把握できる。これにより、日常的な確認作業や集計作業の負担軽減を実現している。
さらに、事故区分別の発生件数やその推移を把握できるため、転倒や誤飲など発生頻度の高い事故傾向を可視化でき、事故対策の効果検証にも活用可能である。
また、報告書は複数の上長による確認・承認が必要となるが、各報告書を開かずとも承認状況を一覧で確認できるようにし、確認作業の効率化を図った。
これにより、承認の進捗状況を一件ずつ確認する必要がなくなり、対応状況を把握しやすい運用を実現している。
| 施策 | 実施内容 |
|---|---|
| 報告書様式の整理 | 特別養護老人ホームとデイサービス、それぞれの業務内容に合わせて「事故」「ヒヤリハット(事故未遂」の報告書を整理。現場で迷わず使える4種類のテンプレートを作成した |
| 集計・確認作業の効率化 | 入力された内容を事故区分ごとに自動集計する仕組みを構築 |
| 承認状況の可視化 | 各報告書の承認状況を一覧で確認できる機能を追加。承認の漏れや対応の遅れに気づきやすい運用環境を整えた |
今回の方針
今回の取り組みでは、「現場が無理なく使い続けられること」を最も重視した。
新しい仕組みを導入しても、日常業務の中で使いこなせず、かえって現場の負担を増やしてしまっては意味がないと考えたためである。
そこで、既存の業務環境ですでに契約し、利用しているMicrosoft Excelを前提に、追加のツール導入は行わず、Excelを活用する方針とした。操作方法を一から覚える必要をなくし、導入直後から自然に業務へ組み込める状態を目指している。
また、「できるだけコストを抑えたい」という要望を踏まえ、見た目の華やかさや多機能化は追求せず、実際の運用に本当に必要な機能だけを整理し、必要最低限の構成とした。
ただし、単に要望を形にするだけではなく、将来の運用も見据えた設計を行っている。お客様と理想の姿を共有したうえで、今必要なものと、現時点では不要なものを切り分け、段階的に機能を追加できる方針とした。
集計項目についても、活用シーンを具体的に想定しながら厳選した上で、数値の内訳と全体の傾向がひと目で分かるよう、表とグラフの両方で確認できる形式を採用した。
報告書は従来の紙のレイアウトを踏襲しつつ、プルダウンやチェックボックスを用いた入力形式へ変更することで、現場の負担を増やさず、心理的な抵抗感を抑えながらデジタル化を進める設計としている。
| 方針内容 | 概要 |
|---|---|
| 現場が無理なく使い続けられることを優先 | 導入のしやすさと日常業務での使いやすさを重視し、現場の負担を増やさないことを優先とした |
| 既存環境を活かした最小構成 | 新しいツールを増やさず、使い慣れたExcelをベースに、運用に本当に必要な機能だけを採用した |
| 将来を見据えた段階的な設計 | 活用シーンを想定した集計設計とし、初期は集計項目を最小限から始め、状況に応じて段階的に改善できる設計とした |
導入後の成果
紙への記入をやめ、入力から管理までをすべてデータで行う仕組みに切り替えたことで、報告記録にかかる時間は大きく短縮された。
これまで必要だった転記作業や記入内容の確認が減り、職員が記録そのものに追われる状況は改善されている。
また、記録方法をデジタルにしたことで、情報の見やすさも向上した。手書き文字の癖や書き方の違いによる読み間違いがなくなり、誰が見ても内容を正確に把握できるようになっている。
その結果、職員間の情報共有がスムーズになり、引き継ぎや相談も滞りなく行えるようになった。
さらに、記録データを一つの仕組みで管理する体制を整えたことで、過去の利用者対応や事案をすぐに検索できるようになった。必要な情報に短時間でたどり着けるため、状況に応じた判断がしやすくなり、対応の見直しや改善にもつながっている。
記録業務の効率化により、時間と気持ちの余白が生まれ、本来向き合うべき利用者やその家族への対応の質を高める土台が整った。
以前の課題とサービス導入後の変化
| 以前の課題 | 導入後の成果 |
|---|---|
| 手書きでの記録が中心で、記入に多くの時間がかかっていた | 記録をデジタル化し、入力から管理までを一つの仕組みで完結 |
| 書き方や文字の癖によるばらつきがあり、内容を正確に読み取るのが難しい場面があった | 記録にかかる時間と職員の負担を大きく削減 |
| 過去の記録を探す際、紙をめくる必要があり、必要な情報にすぐたどり着けなかった | 誰が見ても同じ内容を把握でき、読み間違いや認識のズレが解消 |
| 職員間で情報を共有する際、確認や引き継ぎに手間がかかっていた | 過去の記録をすぐに検索でき、情報共有や引き継ぎがスムーズになった |
| 事故状況を全体で把握できず、また、事故対策の効果を振り返ることが難しかった | 事故区分ごとの件数や推移を集計し、施設全体の傾向把握や対策効果の確認ができるようになった |






