Excel脱却で安定運用へ ― 食品卸企業の帳票業務をDXで再構築 ―
食品卸を営む本企業は、メーカーや生産者から仕入れた商品を複数のスーパーマーケットへ卸している。
スーパー4社(計40〜50店舗)から受領する販売実績データ(POSデータ)をもとに、メーカー約120社への支払通知書および明細書を作成していた。
従来はExcelのVBAでこれらの帳票を出力しており、処理負荷や属人化が課題となっていた。当社は、取り込んだデータをもとに帳票出力までを処理できる業務システムを構築。
Excelで行っていた処理と同等の操作性をWeb上で再現し、作業効率と精度を高めた。さらに、メール・郵送・FAXといった複数の送付形式にも対応する柔軟な設計で、日々の処理負担を軽減している。
| 業種 | 食品メーカー、食品・酒類 卸売 |
| 目的 | システム開発 |
| システム名 | 各スーパーのPOSデータを基に、卸業務におけるメーカー別の支払通知書と明細を生成。PDF出力からメール送信までの一連の処理を効率的に行えるようシステム化。 |
クライアントの課題
既存業務では、ExcelやAccessを活用して自社内で構築した仕組みにより、POSデータを加工・出力していた。しかし、ExcelやAccessのバージョン更新やシステム改修時は、たびたびエラー対応が必要となり、担当者の負担が増加。
こうした状況が続く中で、将来の安定運用に対する不安が高まっていた。処理内容の把握や修正が特定の担当者に依存しており、担当不在時の対応が難しいなど、属人化が進行。さらに、メーカーごとに異なる送付方法(メール・郵送・FAX)への対応も煩雑で、確認作業に時間がかかっていた。
このため、業務の標準化を図りながら、将来的な拡張にも対応できる新たな仕組みへの移行が求められていた。
主な課題
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 既存システムの限界と将来性への懸念 | 自社構築のExcel/Access運用により、処理改修やアップデート時にエラー対応が発生。将来の維持管理や拡張性に不安があった |
| システム管理の属人化 | VBA処理の理解や修正が特定の担当者に依存し、引き継ぎや対応が困難になっていた |
実施内容
当社は、帳票出力業務の効率化を目的に、各スーパーから受領するPOSデータをシステムに取り込み、メーカー別の支払通知書と明細書を出力できる帳票出力システムを構築。
各スーパーから受領する売上データ(POSデータ)をフォーマットに合わせて自動加工し、スーパーへ商品を提供するメーカーや個人生産者向けの支払通知書と明細書を、システム上で自動生成できるようにした。
生成した帳票はPDFとして出力され、システム上でメールのタイトルや送付先アドレス、定型文を含む本文、帳票資料の添付を自動生成し、そのまま送信まで行える仕組みを構築。
これにより、従来の手作業によるファイル添付や送付確認の負担を軽減した。
開発期間中は週1回の定例ミーティングを設け、進捗共有と要望確認を実施。業務フローやデータ仕様を丁寧にすり合わせながら、現場の実態に合った柔軟なシステムへと最適化した。
今回の方針
本プロジェクトでは、Excelで行っていた処理を単にシステムへ置き換えるのではなく、業務全体の質を高めることを重視。
既存業務の流れを丁寧に整理し、実際にシステムを操作する現場担当者にとっての使いやすさと業務効率の両立を設計の中心に据えた。
そのうえで、顧客が日々の運用で感じている不満や不便などをヒアリングし、課題を整理したうえで積極的に改善策を提案。協議を重ねながら実際の業務シーンに即した形でシステムへ反映した。
単なるシステム導入にとどまらず、“現場をより良くする”という視点を軸に、属人化を防ぎ、誰もが迷わず扱える仕組みづくりを目指した。
| 方針内容 | 概要 |
|---|---|
| 顧客と協議しながら最適な機能を選定 | 当社から提案した付加価値機能について、業務シーンを踏まえ顧客と協議しながら要否を検討し、最適な構成を決定 |
| 業務効率と使いやすさの両立 | システム化にあたり、操作性・メンテナンス性を意識し、利用者が迷わず使える仕組みを設計 |
| 属人化を防ぎ、持続的に運用できる体制へ | 担当者の入れ替えにも対応できる標準化を図り、将来的な運用のしやすさを確保 |
導入後の成果
帳票出力システムの導入により、POSデータの加工から帳票作成・送付までをシステム内で完結できるようにした。
これにより、属人化していた手作業を削減し、誰でも同じ手順で処理できる運用体制を構築。メール添付や送付確認といった手動工程を自動化し、送付先や添付資料の誤送信を防止。対応時間の短縮と作業精度の向上を実現した。
また、メーカーごとに異なる送付方法(メール・郵送・FAX)にも対応できる仕組みを維持しつつ、全体の送付フローをシステム上で統一的に管理できる仕組みとした。
今後は、当社が支援した食品卸企業において、メーカーや個人生産者とのやり取りを、郵送やFAX中心の運用からメール送付へと移行し、さらなる効率化を見込みである。
以前の課題とサービス導入後の変化
| 以前の課題 | 導入後の成果 |
|---|---|
| スーパー4社(計40〜50店舗)から受領するPOSデータをExcel VBAで加工しており、処理負荷や作業時間が増大 | 受領したPOSデータを基に加工から帳票出力までを自動処理できるようになり、スーパーごとに異なるデータ形式にも柔軟に対応。処理の正確性が向上し、業務全体の効率化につながった |
| メーカー約120社への帳票送付方法が「メール・郵送・FAX」と多岐にわたり、確認や送信作業が煩雑 | システム上で各送付方法に対応しつつ、メール送付を自動化。送付ミス防止と効率化を両立 |
| ExcelやAccessによる独自運用に依存し、担当者不在時の引き継ぎや障害対応に時間を要していた | システム導入により、属人化のリスクを軽減し、誰でも同一手順で処理できる運用体制を整備した |






